2010.04.19 桜の着物
こんにちは。
石担当由起です。
いかがお過ごしですか。

仙台はやっとお花見の季節になってきました。
お花見をした数だけそれぞれの思い出があると思いますが、
私が桜を見て思いだすのは小説家の宇野千代さんの思い出です。

宇野さんは桜をこよなく愛する方で、彼女のデザインしたお皿や手ぬぐい、着物はもちろんの事、本の表紙までもが桜づくしでした。
宇野さんの本を読み始めた頃の私は、彼女のあまりの明るさに
「この方は能天気すぎて人の痛みをわからないのではないか」と思ってしまいました。
その頃の私は何かにひどく傷ついていて、その心の傷をいやすべく
いろいろなジャンルの本を読み、様々な音楽を聴き、たくさんの人に会うようにしていました。

そうやって今まで知らなかった事をたくさん吸収して私の心が落ち着いてきた頃、もう一度、宇野さんの本を読み返しました。

そこには相変わらず、桜の花びらが舞っています。
でも、能天気だと感じていた彼女の文章は全く違うものに感じたのです。
辛い事の連続だった宇野さんはその度に前向きな思考で乗り越えていき、
その経験の分だけ強くなっていった事が今度はわかりました。
その強さを明るくさらりと語っていたので、私は能天気と勘違いしていたのです。
私もまた、つらさの分だけ強さを手に入れた一人の若者でした。

今でも心が弱くなりかけた時、私は彼女の本をそっと手にとります。
すると、桜の表紙が私を和ませ、本を開く前から私を励ましてくれるのです。

桜柄の着物を身につけてにっこりと笑っている宇野さんの写真を見ながら幼かった自分を懐かしく思い、
「私は死なないような気がするのです」などとのんきな事を言っている彼女を今の私は笑って受け入れる事ができます。

桜の舞う華やかな着物。
それはアクセサリーなど必要が無いほど完璧に彼女の魅力をひきだしていました。
能天気のふりをした余裕。
経験から生まれた強さ。
桜の木のように冬を乗り越えて、やっと手に入れた穏やかな微笑み。
それはうっとりするほどみとれてしまう宝石以上の価値をもつ。
誰も気軽に買う事はできない。

彼女は今頃、空の上ではしゃぎながら桜を見ているのに違いないのです。

穏やかな午後の公園。
桜の花が風に舞うほんの一瞬、私の胸をわずかにしめつけます。

        

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